水中ドローンの切り札なるか、防衛省も期待の「水中光イーサネット」
電波が使えない水中での無線通信手段として、「光」、それも可視光を使った技術に注目が集まっている。
水中無線通信といえば音響通信が一般的だが、その通信速度はせいぜい数十kbpsほど*1。テキストデータは送れても、映像などの大容量データを送受信するのは難しい。しかし、100Mbpsクラスの高速通信が可能になれば、例えば「水中ドローン」の産業活用が一気に進む可能性がある。地上や船上との間に必要だった通信ケーブルのワイヤレス化によってドローンの行動範囲が広がり、自律航行へのハードルが格段に低くなるからだ。
そんな水中無線通信にとって、文字通り「希望の光」として期待が高まっているのが、「可視光通信」である。製品化では英国企業などが先行するものの、近年、日本でも対応する技術・製品が現れた。カギになるのは、半導体レーザー技術だ。
*1 音響通信を高速化する研究も進んでいる。例えば、NTTの「海中超音波MIMO多重伝送技術」は、海中で1.2Mbpsを達成。実用化は3~4年後とみられる。
水中で無線イーサネット通信を可能に
製品化に漕ぎつけたのは島津製作所。同社は2020年2月27日、水中光無線通信装置「MC100」を発売した。レーザー光を利用した光モデムである。通信距離は10mと短いものの*2、通信速度は95Mbps以上を実現した。イーサネット規格である「100BASE-TX」に準拠。送信部に半導体レーザー*3、受信部に光電子増倍管*4を用いており、送受信一体型のモジュール2個1組をペアで使う。価格は合計1500万円(税別)である。